HOME/東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御研究チーム 分子老化制御

研究紹介 SMP30の機能解明 老化とビタミンC シトルリン化分子と老年病態

老化とビタミンC

ビタミンCと慢性閉塞性肺疾患(COPD)

老化とビタミンC

1.ビタミンC合成に重要な酵素

図6

 生物の遺伝子解読を目指すゲノムプロジェクトが進行し、多種多様な生物の遺伝子が明らかになってきました。 私たちは、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の遺伝子データベースを用いた検索から、SMP30が藍藻(藍色細菌とも呼ばれる細菌の一種)にある酵素、グルコノラクトナーゼ(GNL)と非常に良く似ていることを発見しました。 哺乳類において、GNLはビタミンC合成経路の最後から2番目に位置する酵素であり、L-グロン酸をL-グロノ-γ-ラクトンへとラクトン化します。 生成物は、次に酸化されビタミンCへと変換されるのです(図6)。
 私たちはSMP30がGNLそのものではないかと考えて、GNL活性を持つか検討しました。その結果、Mn2+またはZn2+存在下でSMP30濃度依存的に活性が認められました。このようにSMP30は間違いなくGNLそのものです。

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2.ビタミンC合成不全マウス

 ヒト、サル、モルモットはビタミンC合成の最後に位置する酵素(GLO:グロノ-γ-ラクトン酸化酵素)に遺伝子変異があるため、体内でビタミンCを合成できません(図6)。しかし、マウスはGLOに変異がないため、体内でビタミンCを合成できます。SMP30(GNLと同じ)はGLOの1つ手前に位置する酵素です。従って、SMP30遺伝子破壊マウスはビタミンCを合成できない筈です。そこで、ビタミンCを全く含まない餌で飼育したところ、SMP30遺伝子破壊マウスは体重が減少し、コラーゲン繊維の構築不全による骨密度の低下、大腿骨の骨折、壊血病性念珠(肋軟骨形成異常)などの典型的な壊血病(ビタミンC欠乏症)の症状を認めました。このように、SMP30はビタミンC合成において必須の酵素であることが明らかになったのです。

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3.ビタミンCの不足は老化を促進する

図7

 壊血病で死んだからといって、ビタミンC不足が老化を促進したとは言えません。 私たちはSMP30がGNLであることを明らかにする以前から、SMP30遺伝子破壊マウスが早期に死亡することを明らかにしていました(図7)。 この時、壊血病の症状は全く認められませんでした。 なぜなら、通常のマウス餌の中にごく少量のビタミンCが含まれていたため、壊血病にはならなかったのです。 私たちの概算では、マウスが必要とする1日当たりのビタミンC量のわずか2.5%しか餌から取れなかった計算になります。 このようなビタミンC不足状態が長く続いたため、老化が速く進み死亡したのだと言えます。 以前からビタミンCには『抗老化作用』があると言われてきましたが、それを裏付ける科学的根拠は今まで一切ありませんでした。SMP30遺伝子破壊マウスを用いたこれら研究成果がビタミンCの『抗老化作用』を科学的に裏付ける初めての報告です。
ヒトは体内でビタミンCを合成できません。従って、ビタミンCを合成できないSMP30/GNL遺伝子破壊マウスは極めてヒトに近いモデル動物であると言えます。ビタミンCには強い抗酸化作用があり、活性酸素を消去する働きがあります。老化と活性酸素は密接な関係にあり、SMP30/GNL遺伝子破壊マウスから得られる実験結果はヒトでの実験結果に極めて近いと考えられますSMP30遺伝子破壊マウスを用いた研究は、『老化機構の解明』や『老化制御(アンチエイジング)』の研究に大きく貢献することが期待されます。


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